頭をリストラさせて、時代を生きぬけ
最近、大企業が敢行している45歳以上の早期退職が話題になっています。世界的にみるといたって普通なことであり、この勢いは今後も加速していくでしょう。
企業のリストラを考えるにも、不可欠なのは、一人ひとりのビジネスマンの“頭のリストラ”である。従来役に立っていた発想を全部捨てて、まったく新しい発想を求める頭の“思考構造”の大改革を行わなくてはならないのだ。
というのは、多湖輝さんです。
今回紹介する書籍は、多湖輝さんの『頭のリストラ術―あなたの発想構造をガラリと変える』です。
本書では、ビジネスマンが“頭のリストラ”を推し進めるための、発想を転換させる方法を紹介しています。
目次
商品で差別化できる時代は終わった
商品の質や性能による差別化の限界を打ち破るには、
違う枠組みの製造プロセスや入手時間での差別化をはかる
現代のビジネスの競争はすさまじいものです。次か次へと休む間もなく新しい商品・サービスが開発されています。
さまざまな媒体を使ってこれでもかというほど宣伝されているが、いったい一年にどれくらいの新商品・新サービスが世に出ているのか、全く想像できません。
これだけ、新しいものが次々と出てくると、消費者はどれを選んで良いか戸惑ってしまいます。
最先端技術を除けば、いまではメーカー間にはっきりとした技術力、得意分野につがいがある産業は少なくなっています。
もはや、技術競争が業界を活性化させ、商品の質が優劣を決するという時代ではなくなっているのだ。
弱点・欠点を売り物にする
弱点・欠点を消そう、隠そうとすれば、せいぜいマイナスをゼロにしかできないが、逆手にとれば、大きなプラスを生む
ようやく日本も「規制でがんじがらめだ。なんとかしなくてはいけない」という意識が一般的に浸透してきました。
マイナスの要素をうまく生かせれば、弱点をプラスの方向に持っていくことができるのです。
たとえば、女優やモデルの世界でも同じことが言えるでしょう。昔は、人目を引くような超美人でなければ、なり得ない職業だったはずです。
ところがいまは、美人というよりも個性的な顔立ちの女性がもてはやされるようになってきているように思います。かつての基準では美人とされていなかった人が、その顔立ちを個性として人気を集めています。
アイドルもそうですが、少しくらいマイナス点があったほうが、逆にそれが売りになって人気になったりするのです。
マイナス点を消そう、隠そうというのでは、自ずと発想に限界があります。売り方を考えれば、発想の幅が広がってきます。うまくいけば、マイナスをゼロにするどころか、大きなプラスを生み出すこともできるのです。
線で考える
プロセス思考を取り入れることにより、
単なる対応策でなく、抜本的な解決策を生み出せる
点で考えるのではなく、線で考えることが重要だと多湖さんは言います。
ひとつの点だけでなく、一連の流れのなかで問題を考えることを「プロセス思考」といい、まさに線で考えることを指します。
このプロセス思考は、一点だけにとらわれて、一義的な解決法しか思いつかない硬直した思考をもみほぐす有効な手段になる。
つまり、思考回路を点から線へと移行することで“頭のリストラ”を行なうわけです。
さらにプロセス思考は、要素を組み替えることで問題解決をはかるというこれまでとは全く違う発想を与えてくれます。
これからは何か問題にぶつかったときには、自分のそれまでのやり方を見直し、抜本的に変えるいい機会としましょう。
点ではなく線で考えるプロセス思考に頭を切り換えることで、問題解決だけでなく、頭も仕事のやり方もリストラできるのです。
ゼネラリストを目指す
狭い範囲の情報を深く知るよりも、広い範囲の情報を
たくさん知っていたほうが、発想を柔軟に保てる
アイデアを出すまえに、あらゆる情報をあげてみましょう。
ビジネスで考えると、コストや売上状況など直接的な情報のほかに、たとえば顧客指向を調査するなら、その家族構成や趣味、年収、休日の過ごし方などあらゆる情報を集めれば、自ずと顧客が求めているものが想像できます。
そうすれば、販売戦略の発想も湧いてきます。
いい案が浮かばない理由のひとつに、情報量が少ないということがあります。いろいろな情報をたくさん持っていても、冷静に見直してみると、必要な情報は全くなかったなんてことも珍しくはありません。
そう行った情報を取捨選択することも重要ですが、意外な組み合わせがビジネスになることだってあります。ですから、「関係ない」と決めつけず、情報を集めましょう。
そうやって集めた情報が“頭をリストラ”してくれることがよくあるのです。
不可能なくらいの目標にする
目標が現実離れしているほど、それを可能にするための大胆な発想が生まれやすくなる
大胆な発想をしたいのなら、まずは目標自体を大きく修正してみましょう。目標と言われると、現実的に一歩一歩近づけるものという発想があることが多く、ああまりに大きな目標を掲げることは少ないように思えます。
しかし、頭をリストラしようとする考え方では、この手の目標設定の仕方では通用しません。
だれの目にも実現可能性の高い数字、たとえば10倍とか20倍を目標にしていたら、エンジニアリングは達成されず、かえってクリアされないままに終わってしまうことにもなりかねません。
よく人生でも志の低い人間が成功しないといわれるが、それは目標をいつも手の届く範囲内にしか設定していないからである。遠大な目標を立ててこそ、そこに至る道を探すために、人は発想の転換を図るのだ。
まずは、目標を実現不可能と思われるくらいに高いところに設定しましょう。
素人の意見を大切にする
大勢に流される危険を回避するには、
組織のなかに異分子をかならず入れておく
人間には、まわりの人の行動と歩調を合わせることで安心感を得るという心理があります。とくに、日本人にはこの傾向が強く、遺伝子として古くから組み込まれているように思います。
心理学では、これを“同調の心理”と呼びますが、ときにはこのメカニズムが妨げになる場合もあります。「和の精神」は大切ですが、違いを割り切って認めることも重要です。
ある会社では、新プロジェクトチームを編成するときに、各部門からエースと呼ばれる人材を集めるのはもちろんですが、なんとチームには全くの専門外の“ズブのシロウト”を入れるといいます。
なぜかというと、プロであるがゆえに陥りやすい落とし穴が存在するからです。プロだからゆえに、視野が狭くなることもあるのです。こんなときこそ、頭のリストラが必要です。
プロとしての経験や知識を一度捨てて、素人の感覚に戻ってみる姿勢が必要なのです。
新しいものに挑戦するときは、一度玄人(プロ)の目を捨て、素人(アマ)の謙虚さで考える“発想の転換”こそがたいせつなのだ。