子どもが困っていた時に使える魔法の言葉
本書『だいじょうぶだよ、モリス』は、ただの絵本ではありません。
お子さんが日常生活で感じる、あらゆる不安をなくすことができる素晴らしい絵本です。
2児の父でもあり、カウンセラーや教育者でもあるカール=ヨハン・エリーンさんが、書き下ろした絵本です。
我が子以外にも世界中の多くの人々を助けるのに役立つことが検証されているみたいです。
子どもたちだけでなく、大人にも読んでほしい一冊です。子育てにもきっと役に立つでしょう。
また、オリエンタルラジオの中田敦彦さんが初めて翻訳を行った絵本でもあります。解説はわかりやすく大変良かったので、今回紹介させていただきます。
目次
けがや痛み
本書のあらすじでは、
モリスは保育園へ行く途中で転んでひざを擦りむきます。泣き出してしまったモリスでしたが、パパがなだめながら、痛いのがどこかに行っちゃう方法を教えました。
その方法とは痛みに色をつけ、さらに音もつけます。そして、たまたま通りかかった自転車に乗せて運んでもらうというものです。
ここでの狙いは以下の通りです。
痛みを物としてイメージすることによって、脳波痛みから距離を置き、それを軽減できるのです。
「痛いの痛いの飛んでけ〜」はおそらくみんなが知っていることだと思います。この方法はさらに発展したものとも言えるでしょう。
具体的にここでは自転車でしたが、運んでいく模様があるのが子供にとっても理解しやすいのではないでしょうか。乗り物でなくても、人でも動物だっていいはずです。家の中でもできますしね。
注意するポイントもあります。
痛みについて質問するときは、あなたも感覚を研ぎ澄ませて、お子さんが答えたことをくり返すようにしてください。
何かお子さんが痛がった時に、何度でも使える手法だと思います。色や音に変換するというのは、面白いですよね。
作者のカール=ヨハン・エリーンさんの体験談によると、何度も同じことをする度に、どんどん上手になり、すぐに気持ちが切り替えられるようになるそうです。
僕も昔言われたことがありますが、「男だから泣くんじゃない」みたいな昭和なセリフはもうやめましょうね。
苦手な食べ物
本書のあらすじでは、
昼食の時間、お腹がぺこぺこなのに関わらず、モリスはブロッコリーが嫌いだから食べたくないと言いました。
その時、先生は「嫌いだと思っていた食べ物がほんとうは好きだったって発見したことはない?」と質問しました。
すると、試しに食べてみたら好きになった経験が何度かあったのです。それを思い出してブロッコリーを食べてみると、好きになったようです。
ここでの狙いは以下の通りです。
子どもたちは、ある食べ物に何かまずいことがあると——出され方に問題があった、ほかの食べ物とくっついていたなど——修正されない限りそのイメージを一般化し続けます。こうした悪しき連想を断ち切る一つの方法は、その食べ物に対するポジティブなイメージを上書きすることです。
注意するポイントは、
お子さんが好ましい例を思いつくように、それを誘いだすような質問をしましょう。お子さんが何も思いつかないようなら、あなたが覚えている例から、助け舟を出してもかまいません。
子どもの頃、嫌いだったけど、今は好きな食べ物や料理がいくつかありますよね。好き嫌いもかなり減ったって人も多いのではないでしょうか。僕もそのうちの一人です。
そんな小さな成功体験でもいいので、思い出させてあげましょう。決して無理に食べさせるような真似はやめて下さいね。余計にいやになって二度と食べなくなってしまいかねません。
翻訳者(中田敦彦)のことば
最後に、本書の翻訳を担当している中田敦彦さんの言葉を紹介します。
中田さん曰く、この絵本は、子どもにどんな言葉をかけてあげたらいいか迷った時に、「ベストアンサー」を教えてくれるのが『だいじょうぶだよ、モリス』の魅力だと言います。
この言葉を聞いて、僕はしっくりきました。それと同時に絵本からこんなにも学ぶことができるのかということを改めて実感しました。本当に素晴らしい絵本だと思います。
さらに育児への考えを学べる可能性を示唆しています。
この絵本を読んでいただければわかると思いますが、子どもたちだけでなく、大人も一緒に学べる内容になっています。
日本語の翻訳にあたって、主人公のモリスの性別をあえて特定しないことにしたそうです。僕はてっきり、女の子かと思って読んでいましたが、原作では男の子みたいですね。
ここにも中田さんの優しさが含まれていますね。「モリス」の名前をお子さんの名前に変更して読んであげてもいいでしょう。
最後に、中田さんなりのまとめ部分を引用させていただきます。
子育てで困った場面で即使える。その場だけでなく、将来的にも不安やストレスに上手に対応できる子になる。しかも、この本の原理って大人にも同じですから、私たち自身の人生にも役立つ。一石三鳥の本と言っていいのではないでしょうか。